彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

JASRAC引用問題について、あてはめと、こだわりの理由

JASRACから、私の真夜中のポエム(歌詞引用付き)とかライブレポとか、そんなものが著作権法違反だから削除せよ、と言われたので、ほんとにそうなのか、調べて、考えて、検討してみました。

  

manamisinging.hatenablog.com

  

 

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かなりマニアックなところまできましたが、あと少しで終わりだ~。

 

ライブレポ系について、あてはめて考えてみる

今回JASRACから指摘を受けた、私のエントリーは、「楽曲レビュー」と「ライブレポ」の二つの分類できます。「楽曲レビュー」は、ある曲を取り上げ、その詞について感想を述べたり妄想をしたり分析をしたりするもので、「引用」の適法性については、こちらのほうがより問題になりますね。

ただ、JASRACが指摘してきたもののなかには、「ライブレポ」もかなりの数あります。

 

例えば、こちら。 

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このライブでは、フジファブリックが、ファン投票で推薦された、フジファブリック以外の曲を歌う、というコーナーがありました。ファンはみんな、なに歌うかな、って、ドキドキワクワクなんですよ。ちなみに私はスピッツの「渚」を推薦しましたが、落選でした・・・。

で、実際に演奏された曲の一つに、JUDY AND MARYの「LOVER SOUL」がありました。

もう、心の中で、ワー!キャー!!!ですよ。

「LOVER SOUL」はとてもロマンチックな曲ですし、女性シンガーの歌を山内総一郎(フジファブリックのボーカルギター。素晴らしきギタリスト兼ボーカリスト)が歌うところも、興奮するし。

で、会場でじっと耳をかたむけるわけです。山内総一郎の少しかすれたような、でも、のびやかな声が、「あなたと2人で このまま消えてしまおう 今 あなたの体に溶けて ひとつに重なろう」と歌うのを。妄想のなかでは、(彼の)ファン一人ひとりが、雪がそっと降り積もる中、山内総一郎と肩よせあっています(たぶん)。

「ただ あなたの温もりを 肌で感じてる夜明け」

肌で!夜明け! もうだめ!もうだめだ!

 

・・・・みたいな、そんな興奮を、ライブにこれなかったフジファブリックファンの方々と分かち合う、というのがこのエントリーの目的になります。

その目的に必要だ、という判断で、「LOVER SOUL」の詞を55文字引用したのがこちらのエントリーです。

 

その前提で「主従関係」を考えるに・・・・これは、ブログの文章が「主」だといっていいんじゃないですかね?このエントリーは、ライブ全体のレポをしているので、それなりに分量ありますし、LOVER SOUL」はその中の一部にしかすぎません。55文字しかない「LOVER SOUL」の歌詞を鑑賞するのが主で、私のレポのほうがオマケ、ってことは、さすがにないでしょう。

 

「公正な慣行」はどうでしょうか。個人ブログ界にはまだ慣行と呼べるほどのものはないと思うんですが、前エントリーで挙げた髙部氏の文献にならって考えると、考慮すべき要素は以下のとおりです。

  • 引用しているのは、個人ブログであり、営利目的ではなく、商業利用はされていない。
  • 引用されているのは、楽曲の歌詞の一部である。
  • 引用の目的は、ファンにライブの様子を紹介するため。また、感想を述べるため。
  • 引用の態様は、ブログに、明瞭区分性を保ちつつ、また同一性も保持しつつ、さらにアマゾンからひっぱった出所も明示しながらというもの。

 

これが社会通念上、妥当かどうか、という判断になりますが、この程度で「必要最小限度の範囲を著しく超えている」とするならば、ブログに歌の歌詞は一切引用できないという結論になってしまうと思います。

 

「先日、フジファブリックのライブにいって、総君がLOVER SOULを歌ったんだけど、サビの部分の、らららららららら~(鼻歌)っていうところでもう気絶しそうになった!としか書けない、ってことですよね。

 

アホかと。

 

おっと失礼。

 

さらに、目的上正当な範囲内かどうか、についても、歌詞のごく一部であること、被引用著作物の権利者(この場合はYUKI)にマイナスの経済的影響及び効果を与えていないことなどからは、肯定できるのではないかと思います。

 

今回、JASRACからの指摘を受けて腹が立ったのは、こうした歌詞の引用部分がごく一部というライブレポについても、一律に、削除するように要請されたことが大きいです。「楽曲レビュー」はともかくとして、ライブレポで歌詞引用したら即アウトって、それは表現の自由との関係でどうなの???って思います。

 

楽曲レビュー系についても考えてみる

楽曲レビュー系は、最近のものでは以下があります。

 

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ガッツリ、歌詞、全部引用しています。こちらのほうは、見解は分かれると思います。

 

主従関係は分量だけで決まるものではないものの、著作物の全部を引用している場合には特に、目的に照らして全部引用する必要はあったのか?引用著作物のほうが「従」になっているのではないか?という観点から、主従関係を判断することになりましょうか。

 

今回のエントリーは、山内総一郎氏のライブでの発言をきかっけに、「COLORS」という曲は、ぼーっと聴いてると男女の歌のようにも聞こえるけれど、バンドマンのことを歌っていると思って聴いてみると、結構しっくりきませんか?というのが主題になっています。なので当然、歌詞はひとつひとつ引用して、ほら、ここってこういう情景が浮かんできませんか、と書いています。

だから、著作者である私からすると、当然、全部引用する必要がある、ということになります。そして、必要な限度での引用なわけですから、私の著作物ほうが「主」であり、解説の対象としている歌詞のほうが「従」であるといえると考えます。

 

公正な慣行と、正当な範囲内についての考えは、ライブレポの場合と同じです。

 

音楽の未来のために

さて、つらつらと、1日かけて、著作権法32条について語ってきました。このブログをはてなブックマークにエントリーしてくださった方や、Twitterでリツイートしてくださった方もたくさんいらっしゃるようです。その方々にはお礼を申し上げます。多くの人に読んでもらうために書いたので、嬉しいです。

 

といいますのも、私は、アーティストのファンが、ファンサイトであれこれ自由に表現をすることは、当該ジャンルの発展のためには必要不可欠な土壌である、と思っています。

漫画や小説には、二次創作というジャンルがあり、とても盛り上がっています。私は絵が下手なので描いていませんが、ある作品を好きになると、真似したくなるものですし、そのことを語ってしまいたくなるものですし、人に伝えたくなります。

そして、そうした熱いファンは、そのジャンルにお金も落としていますし、アーティスト本人を応援する気持ちは強いと思います。

マーケティングの世界では、このようなコアなファン、つまり商品・サービスやブランドの信者となり、商品・サービスを広める人をアンバサダーとかエバンジェリスト(キリスト教における伝道師が語源)などと呼んでいますが、こうした人を生み出すためには、ファン同士の自由な交流や表現の場が必要不可欠です。

 

音楽をネットでただで、又は安く聴くようになってしまったから、CDが売れなくて、音楽業界が困っている、というような報道があります。でも、ライブでの収益は増えています。今後、さらに多くの人々にとって、音楽は、CDを買って聴くものではなく、体験するものになっていくでしょう。そうした時代において、音楽に関する体験を、表現したり、SNSを通じて共有することは、結果的に、音楽というジャンルを盛り上げ、音楽業界を支えていくことになるのではないでしょうか。

 

不当なフリーライドは、当然、許されないことです。アーティストの血と汗と涙の賜物である作品を利用して、お金を稼いだりする行為は、厳しく罰せられるべきでしょう。そうした行為と、ファンが作品の素晴らしさを積極的に広めていく行為は、区別をして欲しいと思います。

 

新しい技術の発展に直面して、著作権法の権利制限規定は、絶えず見直す必要性に迫られている。現行の制限規定の中で、最も適用の可能性が高いのが引用の規定であるとされ、要件も一般条項に近い柔軟な規定であるといわれている。しかし、第三者の予測可能性が害されることのない判断が求められる。

(前掲髙部268頁)

 

JASRACが、引用については、著作権法32条の要件を検討するまでもなく、一律に削除要請を送り、ブログサービスのプロバイダーがJASRACに使用料を支払う方向に誘導する、というのがこの「第三者の予測可能性」の担保だとするならば、私はそれには、上記の理由から反対です。

 

また、黙ってそうしたブログサービスに移行すればいいじゃないか、はてなで歌詞を引用した文章を載せ続けるのはわがままだ、という意見もあるかもしれません。しかし、私は理由があってはてなブログを利用していますし、著作権法32条で許される適法な引用についてまでブログサービスプロバイダーがJASRACにお金を払う慣行を是とは思っていませんので、問題提起をしました。

フジファブリックには、ライブに行く、CDを買う、DVDを買う、ツアーTシャツを買う、ポップコーンを買う、コーヒーを買う、何でも買う、といった方法で、献金を続けたいと思います。

 

さて、著作権引用問題についてはいったん書ききった、と思いますので、明日からまた、フジファブリックファンサイトに戻ります。JASRACには、さらに考えを深めた上で、直接問い合わせをするかもしれません。その時は、機会があればまたブログに書きます。

 

長々と、マニアックな文章にお付き合い頂き、ありがとうございました。