彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

SNS時代のアーティストの応援の仕方【法律と社会の乖離検証編】

大好きなアーティストについて、Twitterやグログ、instagramで語りたい!褒めちぎりたい!そして応援したい!という気持ちを持つファンは多いもの。私もそのうちの一人です。

 

前回のエントリーでは、現在の法律(特に著作権法)に照らして、歌詞、画像、動画のアップやライブレポートがどのように評価されるかについて論じました。

 

manamisinging.hatenablog.com

 

今回は、こうした法制度が今の時代にあっているのか?もしあっていないならばどうするべきなのか?について、個人的な意見を述べたいと思います。

そう、デカい話です!

ドーンと行くぜ!

 

 

結論からドーンと言うぜ!(宮本浩次さんふうに)

結論から申し上げると、現行の著作権法は、

 

時代に合ってない

絶望的に合ってない

日本経済・文化の進化発展を妨げるレベルで合ってない

 

というのがわたくしの見解です。

 

インターネットで新しいサービスをしようとすると、どうしても著作権法にひっかかっちゃうんですよね。日本の著作権法が硬直的であるばかりに、日本企業が新しいサービスを開発できないでいる間に、サクッとgoogle やappleに世界を征服されました。残念なことです。

 

日本の著作権法が壁となって、日本にもあった検索サービスが発展することができず、google先生に覇権を握られたことについては、こちらの記事がわかりやすいです。

 

www.bengo4.com

 

もちろん、著作者の権利は守られるべきであり、日本の著作権法はそのための大事な根拠規定です。でも、「それってほんとに被害者がいるの?」という場合まで侵害行為としてしまうことによる弊害は大きいのではないでしょうか。

 

この話はデカすぎて私の手には余るのですが、興味のある方は骨董通り法律事務所の福井弁護士のコラムなど読んでみてはいかがでしょうか。雰囲気がわかります。

 

www.kottolaw.com

 

ファンがツイッターのアイコンに著名人の画像を使うことはどうしてダメなの?という素朴な疑問

ファン活と著作権法の関係を考えるにあたり、一番わかりやすい事例は、「ツイッターのアイコンに好きなアーティストの画像を使っちゃダメなの?」という点ではないでしょうか。

 

ここでは、論点を絞るために、「自分の肖像・画像を、商業利用のため積極的に露出している著名人の画像」に限定して考えます。一般の人の画像や、イラストは除外して下さい。

 

前回のエントリーで述べたとおり、アーティストの画像を非営利目的で運用しているツイッターのアイコンに使用することは、著作権侵害にあたります。

 

でも、これをやってしまっているファンの人の心理は、部屋にアーティストのポスターを飾ったり、透明な下敷きに雑誌の切り抜きを挟む(昔やっていた・・・)のとほぼ同じだと思います。大好きだから、ずっとその顔を見ていたいし、その人の一番カッコいい姿を、その人について語るアイコンに使いたいという気持ち、私は痛いほどよくわかります。

 

また同時に、このような行為によって、一体どれだけの被害、損害がアーティスト側に生じるのか、疑問に思います。アイコン用画像を有料で販売しているならともかく、そういうサービスはなさそうなので、これによって売上が減るということはないし、むしろ、宣伝になっていいんじゃないかとさえ思います。

 

また、ツイッターなどのSNSはすでに、マーケティング手法の一つとなっており、アーティストの側が積極的に拡散をしているような場合もあります。そうすると、マーケティングとして権利者側が積極的に行っている拡散と、ファンによる自発的な拡散を区別して取り扱う合理性もないのではないかと思います。

 

ツイッターのアイコンは一例ですが、このように、ファン活をする上で、「これが著作権法違反になってしまうのって、ちょっとひどいんじゃない?」っていうことは、結構あるのです。

 

フェアユースとは

これに関し、日本にはフェアユースの規定がないのでそういうことが起こるんだ、といった意見を見かけることがあります。

フェアユースとは、アメリカ合衆国の著作権法の規定であり、著作物を許諾なく使用することができる場合について定めたものです。以下の4つの要件に照らして、公正な利用(フェアユース)に該当すると認められれば、許諾なく著作物を使用することが適法となります。

 

  • 利用の目的および性質
  • 著作権のある著作物の性質
  • 著作権のある著作物全体との関連における利用された部分の量および実質性
  • 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響

 

中でも、最初の「利用の目的及び性質」(非営利かどうか等)と、最後の「著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響」という要素は重要視されています。その行為によって、著作権者が儲からなくなっちゃうことってあるわけ?ないならいいんじゃない?ってことですね。

 

私は、上記に上げたツイッターのアイコンの事例は、フェアユースの規定に照らせば適法になると考えています。もっとも、ここは日本なので、米国の法律は当然適用されませんけどね。

 

「公正な慣行」をキーワードとした解釈の可能性

フェアユース規定を日本の著作権法にもいれるべきだ、という議論はかなり前からされており、霞が関でも審議されていますが、ちっとも具体化していません。

 

法律というのはそう簡単に改正はされないようなので、日本の著作権法にフェアユース規定が入ることは永遠にないんじゃないかなと私は思っています。

ただ、引用に関する著作権法第32条をもっと柔軟に解釈することによって、実質的には権利侵害行為と評価できない行為が、適法であるとのお墨付きを得られ、ガイドライン化していく可能性はあります。

 

著作権法32条1項

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 

「公正な慣行」とは何か、ということですよね。

これは許されるべきだという社会的コンセンサスが成立している慣行・・・・。

 

遠回りですごく時間がかかりそうですし、ツイッターのアイコンについて裁判など起こらないので、ファン活の支えにはならなさそうですが、現実的な救済策としてはこんなところなのかな~と思っています。

 

今回は、ちょっとデカい話でしたが、次回は、こういう実態を踏まえて、ファンは、というか私は、どうやってアーティストを応援していったらいいのだろう、というファンとしてのマナー(っていうか悩み?)について語りたいと思います。