新海誠監督の東宝夏のアニメ映画「君の名は。」を観てきました。今、まさにこの「時」にピッタリの青春恋愛映画でした。
あらすじはこちら。
1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。
(引用:映画.com http://eiga.com/movie/83796/)
男女入れ替わりものといえば、映画なら「転校生」、昔話なら「とりかえばや物語」(氷室冴子「ざ・ちぇんじ!」は最高)があり、わりとよくあるお話しのパターンですね。ただ、今作は、身近な人間同士(クラスメイトや姉弟)ではなく、遠く離れた場所に住む面識のない男女が入れ替わるというところが変わっています。
以下、ネタバレありの感想です。
「思春期」の甘酸っぱさ
夫がハマりました。
いや、私もハマりましたけども・・・・。
今年の夏は、「シン・ゴジラ」を観て、「怒り」を観て、さらに「君の名は。」ですから、なかなかフィクションの世界から戻ってこれません。現代日本に生まれていてよかったな。
夫婦ともども、新海誠監督の作品は初見で、「映像がキレイらしい」「一部のマニアから絶大な支持を受けている」という前情報しかありませんでしたが、ストーリー、キャラクター、アニメーションそして音楽の魅力が絶妙のバランスで噛みあっていて、想像していた以上に完成度の高い作品でした。また、どこかどう刺さっているのかわからないけど、とにかく刺さってくるんですよ。
新海監督の作品テーマは、「思春期のコミュニケーション」らしいのですが、思春期の頃のダメダメだったけど、確かに今よりも真っ直ぐなところもあった自分を思い出すかどうかで、この作品の受け止め方は大きく違うのではないかと思います。
正直、見ていて気恥ずかしくて、観てるこっちが照れ笑いするシーンも多かったんですが、これくらい直球のほうが思春期の子たちにはちょうどいいんだろうなーと思いました。
また、運命の相手のことを「思い出す」というシチュエーションは、漫画や二次創作の世界では非常に好まれますよね。少女漫画であれば、日渡早紀の「僕の地球を守って」とか。
ゲームやアニメの世界でも「転生もの」は多そうです。漫画「進撃の巨人」の二次創作の世界では、「転生もの」は確立したジャンルとなっています。そういった作品に触れてきた世代からすると、今作はすっと入っていけるんですよね。そして、瀧少年の役をやった神木隆之介君の「忘れちゃいけない人!」の声に鳥肌を立てることになる。
キャラクターの絵柄も、今風だけどアニメ的すぎず、写実的で美しい背景とも馴染むのにダサくないという、絶妙なラインをいっていて、とっても「今」の空気を纏っていると感じました。
これまで、BOY MEETS GIRLといえば私の中で福井晴敏でしたが、新海誠も踊り出てきた感じです(私の心のランキングに!)。
瀧少年はなぜあの場所を探しに行ったか
私「後半のさ、手になんか描くところ、瀧君ちゃんと名前かいとけばいいのに」
夫「馬鹿かお前は!なんであの少年がエラい苦労してあの場所に行ったと思ってんだよ~!」
私「えー。会いに行ったんでしょ」
夫「ちゃんと好きだって言うために行ったんだよ!!!!奥寺先輩とデートして、好きなのはあの子の方だってわかったから、そのことをちゃんと伝えるために行動したんだよ!」
熱弁を振るわれました。
そうなのかな・・・・?
でもまあ、そうだとすると女子的には嬉しいですよね。実際、私も、坂をゴロゴロ転がり落ちて、手を開いたら「すきだ」と書いてあったシーンはうるっときました。あんな風に真っ直ぐ想われたら嬉しいですよね。
私「でもさ、会話も交わしてないのになんで好きになるわけ?お互い」
夫「あの年頃の奴が人を好きになるのなんて大した理由なんてねーの」
そ、そうですか・・・・。
まあそうかもしれないけど。
新海誠監督のベスト盤
私は、夫ほどには登場人物に感情移入したわけでもなく、「感動して泣きました!」ってわけでもないのですが、この映画には何か心惹かれるものがあるなと思い、新海誠監督の過去作「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」を見てみました(with 夫)。
すると、確かに、今作は「新海誠監督のベスト盤」だと納得しました。 魅かれあう少年少女、初恋、記憶そして追憶、美しい空とその向こうの宇宙、音楽との呼吸、気持ちイイカット割り、光の魔法という新海誠監督の特徴が全部盛りである上に、主人公の男子がウジウジしておらず、コメディという今までなかった味付けもされていて、開かれた物語になっています。
今までの系譜の上に今作があると思うと、感慨深いものがあります。そして、2002年の「ほしのこえ」から14年かけて、このような大作を創りだすにいたった新海誠監督という人に、非常に惹きつけられています。
あと、新海誠監督って、声が結構、いいんですよ。
監督は、最初にビデオコンテという、絵コンテが動画になってるものを作成するのですが、それには音も入っていて、声優は新海監督が何役もやっています。この声がかなり、いいんですよね。仕事部屋で深夜、新海監督がこれを一人で制作しているかと思うと、なんかぐっとくるものがあります。
新海監督、私と夫の、それぞれの萌えポイントのスイッチを押したようです。というわけで我が家では現在、新海祭が繰り広げられております。