彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

【感想】松尾スズキアワー「恋は、アナタのおそば」を観ました

2016年3月30日・31日にNHK総合で放送された音楽バラエティーショー「恋は、アナタのおそば」を観ました。

以下、ネタバレありの感想です。

 確かにレトロな風味の音楽バラエティー

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フジファブリックの山内総一郎氏がゲスト出演するということで観たんですが、この上なく濃い面子の中で、比較的薄い人である山内総一郎氏は背景(っていうか舞台装置)に徹していたため、山総が出てることをすっかり忘れてショーを楽しみました。面白かったです。私的には。

 

けっこう前から歌とコントのバラエティ、レトロでありながらちょっと新しい、みたいな雰囲気のあるバラエティを作ろうと画策しておりまして。それが実現するのにスタッフの努力と私の知名度がやっと追いついたというか(笑)。やっとこれだけゴージャスなメンバーに集まってもらえました。(松尾スズキ)

natalie.mu

 

確かにちょっと昭和な雰囲気があって、多部未華子ちゃんがその雰囲気に合っていました。いやー、多部ちゃん可愛いですね。声もすっごくよく通るし、舞台をぜひやってもらいたいです。

 

ギャクが細かい

松尾スズキ氏のお芝居を観たのはこれが初めてだったんですが、大人計画が宮藤官九郎のルーツなんだなということが良くわかりました。くだらないギャクが、途絶えることなく繰り出されてきます。今回のショーは、25分×2回と、尺が短かったのですが、もう少し長く続けてくれたら、毒(っていうかくだらなさ)が蓄積されてもっと笑えたのになーとちょっと残念でした。

 

例えば、青いジャージを着た男を無理やり蕎麦屋に連れ込んだ店員が、男に向かって「限りなく蕎麦屋に近いブルーですから」

 

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

 

 

強引だし意味がありません。

 

 例えば、これから美容院に行くという男に、蕎麦屋の店員が「ソバージュ一丁!」と言ってソバージュのカツラをかぶせたら、男が

 

「私は、千堂あきほですか!

千堂あきほですか!

・・・・・学園祭にいかなきゃ~!」

 

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不意打ちだったのでウケてしまいました。

ソバージュとえいば千堂あきほ、という時代がかつてあったのですよ・・・・。若い観客のほとんどがわからないはずのギャクをよくつっこんでくるなあ!と驚きました。

 

例えば、NHKのプロデューサー役が、多部ちゃんを指して、「ねえ、誰、あの握りこぶしみたいな顔した子は」

 

 例えば、AD役の栗原類くんが、脚本家のおばさんに一目惚れするシーンでは

「え!砂野先生!

知ってます!

長ズボンまでは100マイルの砂野先生ですよね!

『干支なんか知りたくないよ』の砂野先生ですよね!

ホームレス官房長官 『帰ってきたホームレース官房長官 『ホームレス官房長官ジェネシス、などなど!

先生の作品は全部観ています!

敬礼!」 

ホームレス中学生 (幻冬舎よしもと文庫)

ホームレス中学生 (幻冬舎よしもと文庫)

 

 

中学生ならともかく、官房長官がホームレスってあり得ないでしょ。

しかも帰ってくるとか。 

 

例えば、よく車に轢かれるサチコのOL時代の上司(松尾スズキ)が、早速店の前で車に轢かれて、キョンシーみたいな不気味な格好でぴょんぴょん跳ねながら

「水木しげるです~!」

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その瞬間、場が凍りました。アドリブだったらしいんですが、反応のしようがないですよね。そうしたら、松尾スズキ氏は今度は

 

「楳図かずお~」

「し、死んでない、死んでない」

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「死んでない」はむしろこの場合、フォローになってないんじゃないですかね。傷口を広げるというか。

 

こんな感じで、くだらないギャクが細かく刻みこまれるので、ついうっかり笑ってしまうんですよ。

 

なお、脚本家の砂野嵐(どうみても橋田壽賀子のパロディ)が頭に針金ハンガーをかぶっていて、「針金ハンガーを頭にかぶると首が回る」と言ってずっと首を回してるんですが、いったいなんだこりゃと思って「針金ハンガー」「首」で検索したら、You Tubeの動画が沢山出てきました。これ、実験してる人が沢山いるんですね。

 

まだまだ世の中には私の知らないことが沢山あるわ。

 

山総は舞台装置

私の敬愛する山内総一郎氏は完全に舞台装置と化し、歌のシーンでは、バックバンドでギターを黙々と演奏し、芝居のシーンでは、物干し台でBGMを奏でていました。

 

【前編の山総登場シーン】

キツネ:「サチコさん。この犬ぞり庵の店長を、継いでやっておくんなせえ!」

多部ちゃん:「ええええ~!」

キツネ:「詳しい話は、物干し台で」

多部ちゃん:「なぜ、物干し台で?」

キツネ:「詳しい話は、ウェブか、物干し台と決まっているんで」

二人、階段を登って物干し台へ

 

物干し台のシーンでは、山総が、スナフキンみたいな格好してギターを弾いており、それが二人の会話のBGMとなる。 

 

 二人の会話が一段落したところで、

山総:「いつか~出前で~逢えたら、いいね~♪」

多部ちゃん:「あの、キツネさん。ここで、ギターを弾いている人については・・・」

キツネ:「それは触れない方向で」

多部ちゃん:「了解」

 

 後編での登場シーンも、だいたい同じような感じでした(大竹しのぶが「そのギターを弾いてる人は・・・・」と問いかけたのに対し、山総が「それは~触れない~方向で~♪」と歌って応え、大竹しのぶが「了解★」)。

 

それでよろしい。

正解。

松尾さん演出正解!

 

あの濃い役者たちのなかで山総に何か喋らせるなんてガクブルと思っていましたが、彼の薄さがむしろマッチする演出でした。

ありがとう松尾スズキさん。

 

なんでこの番組に山総が出演してるのか、サッパリわかりませんが、番組自体は面白かったのでよかったです。

大人計画のお芝居観に行きたいなあ。