フロントマンであった志村の急逝の後、「MUSIC」を経てからフジファブリック3枚目のアルバム「LIFE」は、「リバース」という不思議な曲で幕を開ける。
アルバム「LIFE」はアナログテープで録音されているが、「リバース」は、アルバムの最後に収録されている「卒業」を逆再生(リバース)させたものである。もともと「卒業」にテープの逆回転の音を重ねたくて、逆再生してみたところ、「何かすごく感情を揺さぶられるものが、そこにはあって」(excite. musicインタビュー)、アルバムの冒頭に相応しいとされた。
目を閉じて巻き戻されていく音を聴いていると、記憶が巻き戻されていくような錯覚に陥る。どこまで戻っていくのだろうか。実際に時を巻き直すことはできない。取り返しのつかないことは取り返しのつかないままだ。
しかし人は、象徴的な意味での「死」と「再生」を経験する可能性はいくらでもある。
このアルバムを作り、そして武道館ライブを成功させることで、メインのソングライティングを担った山内総一郎も、象徴的な意味での「死」と「再生」を経験したのではないか。それくらい深い部分まで降りて、自分と向き合ったのではないか。そんな風に思わせるアルバムである。
アルバム収録曲について感想を述べた過去のエントリーを並べてみる。
透明できれいだけれど、どこか孤独でさみしい
だけど救いも希望もある
伝わってくるのは、山内総一郎のだいたいそんな世界観である。そこに金澤ダイスケと加藤慎一が色合いを加えている。
自分の中にそういう風景が横たわっていること、それを歌にして描き出したことで、山内総一郎は変わり、新しい世界に一歩足を踏み出した。変容は伝播し、バンド自体もまた変わっていく。
そういう意味で、前後の文脈も含めて、「LIFE」は深い感銘を私に与えてくれた。納められた一曲一曲もすべてが大好きなアルバムだし、これからも何度でも、繰り返し聴くと思う。