「幸福」中毒になっている。
不思議と繰り返し聴いてしまって、聴き続けている。
このアルバムには中毒性がある。
新曲が3曲しか含まれてない、とわかった時、がっかりした人は多いと思う。私もそのひとりである。でも、ひきこまれるように聴き始め、後に納得した人も多いだろう。私もそのひとりである。
通して聴くと、アルバムという一つのまとまりとしての完成度の高さが、じわじわと迫ってくるのである。この上なくポップなのにファンキー。跳ねてるのにせつない。
「靖幸」「家庭教師」が岡村靖幸前期の最高傑作だとすると、「幸福」は岡村靖幸後期(2000年~)の最高傑作といっていいかもしれない。
- アーティスト: 岡村靖幸
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックダイレクト
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: CD
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2010年以降、岡村靖幸は、音楽プロデューサーであり今は所属事務所の社長であもる近藤雅信氏と二人三脚で活動をしているが、お酒を覚え、社交的になり、人との交わりの中で良いコンディションを手に入れた彼は、その土台の上にカラフルで刺激溢れる音と言葉の世界を構築して、今回、私達に見せてくれた。
自分の中にある何かを深く深く追い求めて、螺旋階段を下りていくように、深い井戸に潜っていくように、一つのテーマをしつこく追い続け、時に自己模倣になりつつも、それが作品を進化させていくアーティストがいる。私にとっては村上春樹とアラーキーがそうだが、このアルバムで岡村靖幸もそのカテゴリーの人となった。
女々しいこと言おうが
ペシミスト気取ろうが
痛い 痛い 痛い 痛い
時に愛は 僕たちを
めちゃくちゃにする
(「できるだけ純情でいたい」)
男子の情けなさ、痛さ、痛い自分、青春の青臭さ、純粋なものに対する憧憬、求愛、モテたい欲、そしてエロ。これらを混ぜ合わせ、ファンクなビートにのせると岡村靖幸の音楽となる。
激しい夜交わした
疾しい気がしだした
でも 逢いたい 逢いたい 逢いたい
まだ 迷路から抜けられず
思わず目を閉じた
(「できるだけ純情でいたい」)
岡村靖幸はまだ迷路の中にいるのだろうか。
でもそれは、以前のような、真っ暗で出口のないものではないのだと、思いたい。こんなにも大勢の人が彼を待っている。
ちなみに、ジャケットの会田誠の絵は、制作期間は約1年だそうである。愛を感じる。