2月9日は、フジファブリックのキーボーディスト、金澤ダイスケ氏の誕生日です。
今年で38歳。おめでとうございます。
ダイちゃんの愛称で親しまれている彼の鍵盤は、フジファブリックの音楽を強く特徴づけている。特に、志村正彦がいた頃の彼は、誰よりも深く志村に寄り添い、志村正彦の時に郷愁に満ちた世界観は、金澤ダイスケの鍵盤なくしては成り立っていなかったといえるほどなのではないか。
例えば、四季盤と呼ばれる初期の作品群の中の「陽炎」は、鍵盤を背景にした志村の声で始まり、最後まで、激しいキーボードの疾走感が印象的だ。
あの歌詞に、あの声に、あの鍵盤があって、初めて「陽炎」が立ち上がる。
志村正彦が表現しようとしているものをより良い形で世の中に出せるよう、彼は心を尽くしていた。誰かの才能を支えることが、彼の生き様なのではないかと思えるほどに。
志村がいなくなってからは、加藤慎一の作詞で、「スワン」「フラッシュダンス」や「マボロシの街」などの曲を作った。
美しいメロディーの曲で、どちらかというと体温の低い曲だ。
私は、「ダイちゃんはこういう曲をつくるのだな」と思って聴いていた。
優しい気持ちになりながら・・・・。
それが、最近、どうやら少し変わり始めたのでは、と思ったのは、彼の作詞作曲の「the light」からだ。「STAND!!」ツアーでは、この曲でバンドは、圧巻のパフォーマンスを見せた。
山内総一郎の声質を生かした、静かな中にも緩急を感じさせるメロディアスな前半と、バンドメンバーが全員一斉に演奏に没頭し始める怒涛のアウトロという、不思議な曲だ。
配信限定でリリースされている「かくれんぼ」で、それは確信に変わった。
彼は、こういう人だったんだ、と目が開かれる思いがした。
これら最近の楽曲は、誰かに寄り添うわけではない、彼自身のための音楽だ。
どちらかといと、バンドメンバーのほうが、彼に近寄って演奏をしているように感じる。「俺も一緒にやるよ!」と。
とても情熱的なのに、それが表面に出てくるのにすさまじく時間がかかる人なのだ。
音楽は、否応なしに、その人自身を伝える。
金澤ダイスケという人の人となりは、彼の表面的な器用さ(実にバランスをとるのが上手い人である)に隠れがちだけれども、音楽が私たちに伝えてくれる。
これからの彼のつくる楽曲が楽しみで仕方がない。