彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

映画「LA LA LAND」 ハリウッド映画人が見る夢は

ミュージカル映画、「LA LA LAND」を観てきました。

以下、ネタバレありの感想です。

 

アカデミー賞6部門受賞という華々しい映画ですが、見た目(入口)ほど一般受けするものではない、不思議な作品でした。

 

Ost: La La Land

 

作品の主題

作品の主題は明確です。監督が、パンフレットで言明しています。

 

僕がとても感動したのは、人は人生において、自分を変えてくれて、なりたい人物になれる道筋を作ってくれる人と出会えるけれど、最終的にはその道をひとりで歩まなければならないということだ。人は、残りの人生を決定づける人と結びつくことはできるが、その結びつきは残りの人生までは続かない。そのことは、ものすごく美しくて、切なくて、驚くべきことだと僕は気づいたんだ。この映画ではそのことを描きたかった。

 

(映画パンフレット デイミアン・チャゼル監督インタビュー)

 

観終わった後にこれを読むと、とても腑に落ちます。 

この映画を、夢を追う二人の感動ラブ&サクセスストーリーとしてとらえると、二人がそれぞれ夢を持っていることはわかるものの、果たして実力はどうなのか?どのように困難を乗り越えて栄光を勝ち取ったのか?という部分が全く語られないため、戸惑います。

 

ミアの一人芝居は、作品の内容そのものは割愛されているため、面白いのかどうかわからないし、セブの演奏だって(ライアン・ゴズリングが自分で弾いてるのは感心するとしても)、わりと普通のように思えます。二人以外には名前のある脇役はほとんど出てこないという有様なので(唯一名前があるのはキースくらい・・・)、当然といえば当然です。姫川亜弓も、月影先生も出てこなければ、北島マヤの実力だってわかりようがありません。

 

ガラスの仮面 1 (花とゆめCOMICS)

 

しかし、二人の実力と成功譚は、上記の作品の主題と関係のないことなので、描かれていません。ミアとセブが別れた理由も、同様の理由から描かれていません。大事なことは、二人が出会って結びつき、影響しあいながら、最終的には別々の道を歩んだことを、美しく、切なく描くことなのです。

 

そのため、ラストシーンのセブの演奏、あの一点に向けてすべては構成されており、あのシーンを感動的に見せるためのパーツは、一つ一つが素晴らしい出来栄えです。力が入っていたのは、やはり二人が恋に落ちていく過程ですね。ラブコメマニアの私としては、二人がマウント・ハリウッド・ドライヴで、「あなた/君に興味なんてないから」と言いながら、お互いにツンツンしながら意識しまくって踊るシーンは、とても楽しめました。また、ミアがリアルト劇場に駆けつけ、舞台の上でセブを探すシーンも美しかったです。ミアの背中がとてもきれいでした。

 

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まだ年若きデイミアン・チャゼル監督が一体何を経験して上記の主題で映画を撮ろうとまで思い至ったのかわかりませんが、その試みは十分に成功したといえるでしょう。

なお、私はラストのピアノのシーンで泣きました。監督の罠にまんまと引っかかった模様です。エマとセブがピアノバーで対面してキスするシーンとか、エマの一人芝居が満員でセブがちゃんとそのお芝居を観れているシーンとか、「こうだったらよかったのに」という二人の未練がこれでもかと詰め込まれ、それが美しく昇華されている様に感動したのです。

ライアン・ゴズリングのたれ目も、最高にいい味だしていました。

 

エマ・ストーンの魅力

ミアを演じたエマ・ストーンは、不思議な魅力の女優さんでした。

アップでよーく顔をみると、目も口も大きく、眉毛もややはっきりしすぎていて、「果たして美人なのか・・・・?」と思う瞬間があるのですが、笑顔がチャーミングだし、ときどき、ドキッとする表情をします。また、パーティーに向かうシーンで、ミアがブルーのドレスを着て踊るシーンがありますが、とてもセクシーで華がありました。

 

そしてなんといっても、素晴らしかったのは、売れていない時代とラストの売れている時代で雰囲気をきちんと変えていて、セブのピアノバーに行く直前は有名女優っぽさをすごく醸し出していたのですが、最後の最後、セブに振り向いて笑いかけるシーンでは、昔のミアにちゃんと戻っていたところです。

私はここでまた滂沱の涙です。チャゼル監督の罠・・・・!

昔の恋人に会うと、一瞬で昔に戻ってしまう・・・・そういうことって、ありますよね。

 

音楽

ミュージカルなんで当然、音楽も素晴らしかったです。

冒頭のAnother Day Of Sunが、歌としても踊りとしても、一番気に入りました。

あえていえば、この最初のシーンで踊る人たちが一人も主題のストーリーに絡んでこなかったのは少し寂しかったかな。いわゆる群舞なんですかね?ミュージカルの作法?

とても迫力のあるシーンだったので、もうちょっとストーリーに絡ませてほしかったな。無理なんでしょうけど。

 

以上、感想でした。