彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

映画「怒り」 緊張感がせめぎ合いっぱなしの142分

吉田修一原作、李相日監督の映画「怒り」を観てきました。

 

「怒り」オリジナル・サウンドトラック

www.ikari-movie.com

 

吉田修一の原作「怒り」は、上下巻の分厚いボリュームで、人を信じることの難しさ、疑いが芽生えてしまったときの苦しさを、これでもか、としつこく描いています。物語から立ち上るその息苦しさには圧倒されるほどです。 

 

怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)

 

  

 吉田修一×李相日監督のコンビは、前作「悪人」も傑作だったので、キャスティングもばっちりな今作は公開を待ち望んでいました。

 

悪人

 

ストーリーはこんな感じです。

東京・八王子で起こった残忍な殺人事件。犯人は現場に「怒」という血文字を残し、顔を整形してどこかへ逃亡した。それから1年後、千葉の漁港で暮らす洋平と娘の愛子の前に田代という青年が現れ、東京で大手企業に勤める優馬は街で直人という青年と知り合い、親の事情で沖縄に転校してきた女子高生・泉は、無人島で田中という男と遭遇するが……。

(引用:映画.comhttp://eiga.com/movie/81486/

 

では、具体的な感想です。

全体を総括すると

さすが李監督、役者の演技をひき出すのが上手い。

特に、広瀬すずちゃんの熱演は、すごかった。

あんた女優だ!大女優になれるよ!

って感じです。 

 

他の人も、みんないいんですが、一番将来性を感じたのは広瀬すずちゃんかなー。

 

さて、役者に関する感想がトップに来てしまう時点でお察しですが、映画の作品としての評価は、事前の期待値がめちゃくちゃ高かったこともあり、前作「悪人」を少しだけ下まわる感じ、です。原作を上手くまとめられていたし、役者の演技も申し分なかったんですが、東京、千葉、沖縄それぞれのストーリーが若干消化不良で、もう少し時間をかけて掘り下げて欲しかった、という欲求が残りました。142分という尺ではどうしようもなかったんでしょうけども。

「進撃の巨人」とか「ちはやぶる」を前後編にするなら、これを前後編にしてほしい、と思ってしまいました。そこまでの動員が見込めない場合には無理なのかもしれませんが・・・。

 

東京編について語らせて欲しい

物語は、「東京編」(妻夫木聡、綾野剛)、「千葉編」(渡辺謙、宮崎あおい、松ケン)、「沖縄編」(森山未來、広瀬すず)がそれぞれ同時進行的に進んでいくのですが、この「東京編」については語らずにはおられません。

  • 母親の病室での最初のシーンの、妻夫木君のアップ(どことなく泣き顔)で、もう泣けました。妻夫木君ってホントに上手いんだ・・・・と思いました。
  • そして綾野剛!「日本で一番わるい奴ら」で悪徳警官をやっていた人と同じ人だなんて信じられない。なにこの儚さ。幸薄さ。肌の白さ。
  • 妻夫木×綾野について、「リアルBL」「お墓ホモという新ジャンルを拓いた」とか感想が流れていますが、そういう感想が流れちゃうのが分かるくらい、印象的な二人のたたずまいでした。官能的で生々しいセックスから入る純愛、っていうのかな。二次元では腐るほどある題材なんですが、説得力ある日本人の映像でこれまで観たことなかった気がするんです。
  • 妻夫木君と綾野剛君が、役作りのために二週間、ホテルの一緒の部屋で毎日暮らした、っていう制作裏話も、なんかもうたまんないですね。だってすごく仲良さそうなんだもん。見た目のいい男子が仲良さげ、っていうのは女子心(女ごころではない)をくすぐるんですよね。ジャニーズ好きな人の多くはそうなんじゃないかな。
  • というわけで「東京編」だけでもう一作、つくってほしいです。