映画評論家の町山智浩の映画ムダ話35「シン・ゴジラ」評が、とてもスリリングで面白かったです。
「シン・ゴジラ」は語りたくなる映画だけあって、既にかなりたくさんのレビューがありますが、公開から1ヶ月以上が経って、真打ともいうべき町山智浩の本格的なレビューがついに公開されました。200円の有料ダウンロードですが、映画ファン、特撮ファン、ゴジラファン、庵野ファンそして町山ファンなら聴いて損はない評論です。
「シン・ゴジラ」が、岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」の影響を受けていることは、既に多くの人が指摘していますが、町山智浩は、それ以外の「シン・ゴジラ」に反映されている過去の様々な作品を掬い上げていきます。
まず、「シン・ゴジラ」を観た時に感じる高揚感は、「下町ロケット」に代表される池井戸潤的世界と共通すると指摘します。作業服を着た人々の活躍によって、日本の復活が描かれるという世界観です。
また、町山智浩は、戦後から20年程度の間に作られた数多くの特撮映画についても解説していきます。
東宝特撮映画の「妖星ゴラス」
同じく東宝の「宇宙大戦争」
1971年に、小学校5年~6年生の庵野監督が「沖縄決戦」と「東宝チャンピオン祭り」(「ゴジラ対ヘドラ」「帰ってきたウルトラマン」を含む4本立て)を同時期に見ていたはずである、というのはすごい指摘で、鳥肌たちました。また、「東京決戦だ!」と役者に叫ばせた脚本家の人の話も・・・・。当時、戦争が人々にとって遠い過去などでは決してなかったことを思い知らされます。
小学校高学年の頃に見た強烈な映画やテレビ、漫画って、心に刻み込まれますよね。「帰ってきたウルトラマン」は、後日、監督自身によって自主制作もされているし、その影響力の強さはいかばかりか。庵野監督にとって、「シン・ゴジラ」は確かに33年越しの作品なのですね。
矢口蘭堂は大人としての庵野監督で、彼の巨大すぎるほどの自意識は牧博士とゴジラそのものに閉じ込められているという分析にも、「なるほど!」と手を打ちたくなるような鮮やかさがありました。
そこに「白い巨塔」から「ガンダム」への流れ、そして宮澤賢治の「春と修羅」(とそしてエヴァ)がぶっこまれてくるわけです。
久しぶりに、「批評」という行為の豊かさ、面白さを感じさせてくれる評論でした。