「初恋の嵐」の13年ぶりのアルバム「セカンド」に、ゲストボーカルとして山内総一郎が参加した「だんだんわからなくなる」。作詞作曲は西山達郎。
西山達郎の歌詞世界は独特で、物語が広がる。
さっき見せた優しさは捨てて
さっきかけた言葉は忘れて
たださみしい今夜はつらいほど君に会いたくなる
ただ心がないだけ
「心がない」のに、会いたいとはどういうことなのか。
しかも、心がない「だけ」とは。
「心がない」のは、結構大きな話だと思うのだけど、さらりとそんなことを言うから、余計気になってしまう。そう、「心がないのに」と言われるより、「心がないだけ」と言われるほうが、気になってしまうのだ。
マッチがない 二人は目が慣れ
必死に手探りで確かめる
必要さえないままつらいほどやはり欲しくなる
もう光がないのに
終わったら優しさを塗りたくる
心と体がバラバラの男の話なのだろうか。
必死に手さぐりで確かめているのは何なのか。
二人の現状?
必要がないのに、つらいほど「欲しくなる」。
欲しいからといって、必要なわけではないなんて、それじゃあ、あなたが今欲しがっているものの価値をあなたはどう思っているの、と責めたくなる。
そして、事が終わると、優しさを「塗りたくる」。
「情事」という言葉が浮かぶ。
街のイメージは、新宿か上野。
これはこれで正しいんだと
時がたちだんだん目が慣れてくる
君が夜と僕を飲み干していくのを見てる
僕はまったく動けないまま
だんだんわからなくなる
平気さ つらいのは君のせいじゃない
もう心がないのに
終わったら優しさを塗りたくなる
だんだんわからなくなる
だんだんわからなくなる
真っ直ぐでひねたところのない山内総一郎の声でこんな歌をうたわれると、少し戸惑い、でも立ち上ってくる景色に心奪われる。
地方から上京してきた大学生くらいの男子が、ぬきさしならないところにはまっていくシーンを想像したりする。むしろそのほうがリアリティがあるようにも思えてくる。
こういう山内総一郎もいい。
もっともっと、見せて欲しいと思いました。