久しぶりに、心にずしりと残る漫画に巡り合いました。
ゴトウユキコ「水色の部屋」。
歪んだ愛が描きたかった。
暗い映画を観てるような漫画が描きたかった。
「水色の部屋」は自分にとって挑戦的なまんがになりました。
(ゴトウユキコ「水色の部屋」あとがき)
作者であるゴトウユキコの試みは成功しているといえるでしょう。主人公の幼馴染のスカートから伸びるももの太さも、主人公の友人の空洞のような悪意も、「平成」の時代のソレのはずなのに、どうしようもなく「昭和」の匂いがします。また、物語の風景やコマ運びは、アナログな映像を見ているようです。
コメディータッチの前二作とは大きく異なる今作のストーリーは、ショッキングな内容です。
「母さんがレイプされた」。高校生の柄本正文は、母親のサホに対して屈折した愛情を抱いていた。やがてその想いはひとつの事件を引き起こしてしまう…。ゴトウユキコが圧倒的な深度で描く、思春期の断絶。
読む人を選ぶ作品であることは間違いないでしょう。ただ、途中、目を背けたくなるような展開はあるものの、ラストはまさに、うすぼんやりした「水色の部屋」のような、ほのかな明るさと穏やかさを感じさせます。いい終わり方だと思いました。
特設サイトでは、作者の対談も読めます。
Q.漫画家になっていなかったら?
A.死んでた(ゴトウ)
端的でいいですね。
漫画の題字はアラーキーで、帯は山本直樹がかいています。この二人にピンとくる人なら買って損はない作品です。