街を歩きながら、イヤホンで音楽を聴くのが好きです。
家でゆっくりとスピーカーから流れる音楽に耳を傾けるのも好きです。
でも、なにより、ライブで真っ直ぐに届く振動と溢れる光にこの身を委ねるのが一番好きです。
すべてをきちんと記憶できるわけじゃないんです。
むしろ、映像と音に関する記憶力は悪い方です。
この目に、鼓膜に、焼き付けたいと思って全身で聴いても、終わった後に思いだせるのはいつも断片ばかり。YouTubeやDVDであれば繰り返し見て、かなり記憶することもできるけど、ライブの場合、掬い上げたそばからさらさらと指から零れ落ちる砂のように、私の(小さな)海馬と扁桃体からは音も光も消えていってしまうのです。
だけどそれでも、ライブが好きです。
その時だけの刹那的な愉しみではないのです。
調子に乗って首を振りすぎて残る筋肉痛が、興奮をともにした隣人との会話の記憶が、そしてなにより胸に残るこの想いが、ライブで私が受け取ったものの大きさを示しています。
おもい浮かべるのは、きれいに輝いていた月の光だったり、ズボンの裾の下からチラチラ覗くキーボーディストの細い脛だったり、風に吹かれるギタリストの横顔だったり、ピンクの照明が似合うベーシストの動かなさ具合だったりするのですが、それがたまらないほど胸を締めつけるんです。
その時に確かに受け取ったものの大きさや深さや清らかさと、なぜだか記憶の網に引っ掛かった断片的なシーンは、どうやら結びついているようです。
フジファブリックの9年ぶりの日比谷野外音楽堂でのライブ、本当に行ってよかった。写真は、翌日、付近に行った際に遠回りして撮ったものです。
切り取ってよ、一瞬の光を
写真機はいらないわ
五感を持っておいで
私は今しか知らない
貴方の今に閃きたい
呼吸が鼓動が大きく聴こえる
生きている内に
焼き付いてよ、一瞬の光で
またとないいのちを
使い切っていくから
私は今しか知らない
貴方の今を閃きたい
(東京事変「閃光少女」より)