彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

「花屋の娘」 一歩間違えばストーカー

インディーズ時代のセカンドアルバムである「アラモード」に収録された曲。作詞作曲志村正彦。金澤ダイスケと加藤慎一は既に加入しているが、山内総一郎とはまだ出会っていない。

 

アラモード

アラモード

 

 

この曲については、MVも作成されている。かなりおかしなMVだけど、ヘンな色気があって、初めて見たときは、にっかつロマンポルノ(見たことないけど)みたいだと思った。

 


花屋の娘 - YouTube

 

夕暮れの路面電車 人気はないのに

座らないで外見てた

暇つぶしに駅前の花屋さんの娘にちょっと恋をした

 

路面電車の中から眺めただけの娘である。一瞬のことと思うだろう。

しかし。

 

どこに行きましょうか?と僕を見る

その瞳が眩しくて

そのうち消えてしまった そのあの娘は

野に咲く花の様

 

妄想が始まるのである。

話しかけてくるのは彼女のほう。

しかし、娘の影は一瞬で消えてしまう。

これでは足りないと歌い手は思う。

 

その娘の名前を菫(すみれ)と名付けました

 

なんと、名前を付けるのである。

もちろん、妄想はそれに留まらない。

 

妄想が更に膨らんで 二人でちょっと

公園に行ってみたんです

かくれんぼ 通せんぼ ブランコに乗ったり

追いかけっこしたりして

 

このあたり、歌い手の原風景なのか、その後もよく出てくるモチーフである。「通せんぼ」とか「追いかけっこ」とか、いい年した人間がすることではないが、なんだかイケナイコトのような気がしてくるのは何故なのか。

 

どこに行きましょうか?と僕を見る

その瞳が眩しくて

 

再び彼女は問うが、歌い手は自分からはやはり切り出すことができない。

 

もちろん歌い手はストーカーではない。しかし、車窓から見ただけの娘に名前を付けた上、彼女に「どこに行きましょうか」と死ぬほど問われたいのである。一歩間違えれば完全にあっち側である。しかもそれを、疾走感溢れる鍵盤のリズムにあわせて歌い上げるのである。

 

なんでこんなことを歌にするのか。でもすごくいい曲なのだ。

ロックってなんだっけ。あ、若い男の行き場のないリビドーの発露でしたっけ。だったら正解か。

 

フジファブリックの初期の傑作。