フジファブリックのメンバーは、3名体制になって、いやがおうにもその役割を変えざるを得なかったわけですが、加藤さんも大きくそのプレゼンスを変えた一人です。(ルックスは驚くほど変わらないけど)
彼が詞を書く人だったなんて、それまで誰が知っていたでしょう。
アルバム「MUSIC」収録の「会いに」は、作詞は志村正彦・加藤慎一、作曲は志村正彦。加藤さんが初めて詞を描いた歌です。
- アーティスト: フジファブリック
- 出版社/メーカー: Sony Music Associated Records Inc.
- 発売日: 2013/10/23
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
空がひろがってく 雲は溶け出してる
まぶしいのに なぜか見上げちゃって
目をつぶってみても 瞳閉じないから
瞼の裏 透けたスクリーン
まぶしい光に包まれるような、真夏の日差しに目を閉じたときの感覚。
カラッと爽やかでいて、どこか柔らかい歌い出し。
総君の声によく合っています。
今も考えてる ずっと考えてた
どれくらいかな 左手にあった
アイスキャンディー なくなってたから
立ち上がって 歩き出した
座ってずっと考えてたのは、君のこと。
時を忘れて過ごしていたけど、もう立ち上がらなくちゃいけない。
それは、「まとまっていない気持ちだけど、届けてみたいから」
―――普段から加藤さんは誰かに会いたいと思ったら、この曲みたいに颯爽と会いに行ったりするタイプの人なんですか?
「いや、たぶん違うと思いますね」
―――ですよね(笑)
「そうなんですけど。この曲に関しては、たぶん・・・・・・・・歌詞を書くときは、嘘はついてはいけないと思ったんで。だから僕の赤裸々な感じが入ってるかもしれないですね」 (音楽と人2010年8月号)
普段はゆるゆるしている加藤さんですが、隠された心の一面ではこういった感情もある人なんですね。加藤さんにとっても、詞を書くことは世界を広げる結果になっているようです。
その後も、彼はフジファブリックで多くの作詞を手掛けており、「会いに」「Time」「スワン」のような、素直な気持ちを綴ったと思われる作品もあれば、「アンダルシア」「流線型」「徒然モノクローム」のような摩訶不思議物語系作品、「しかたがないね」「フラッシュダンス」のような恋愛小話系作品などがあります。また、掛け言葉を多用するのも加藤さんの詞の特徴です。
そこから感じられるのは、求められる役割に合わせて自分の立ち位置を変える柔軟性と、そこにちょっとだけ自分の遊び心を入れるバランス感覚です。
今回、これまで4人でやってたことを3人でやってる中で、加藤さんは、コントロールルームで前に出てきたりしてしゃべったりとかもしていますからね。なんや、できんのやとか思ったけど(笑)。ちゃんと、自分の立ち位置みたいなのを知ってるんですよ。それは、一つの才能だろうなと思った。よくいろんな状況を見ているし。(FAB BOOK 221頁〔山内総一郎〕)
あと、加藤さんはやっぱり視線が暖かい。個人的には、山内総一郎氏に対する視線の優しさに泣けます。上手くYou Tubeの画像が貼れないんですけど、2014年9月2日に放送されたアルバム「LIFE」発売記念のゆるいか生絞りスペシャルの24分あたり、「ダイスケの小部屋」がはじまった場面で、バックミュージックがこれまでと変わったことが嬉しいのか、山総氏が手でリズムを取り始めます。で、なんか嬉しいらしくて加藤さんを見てにこっとするんですが、加藤さんそれを見て優しく笑うんですよね。ちなみにその間、チャンダイ先生は司会進行をしています。
もう、「加藤くんは、総一郎君の面倒を見て偉いわね・・・・これからも遊んであげてね!」と保育園の保母さんの気分になります。
バイク横切って 風と匂いが
あの日の風景 思い出させてくれた
間違いないよ さらに足は進んで
はずんだ呼吸に ニヤけちゃって
ニヤけちゃって、というところがいいですね。息切れして、ちょっと笑うみたいな。
コンパス指さない地図だけど 迷ったりしないよ
3人ならきっと大丈夫。
そう思わせてくれる加藤さんの安定感、これからもキープして欲しいです。