彼方の音楽

毎日の中でこころ動かされたことを、つらつらと綴っていきます。

「MUSIC」 ギリギリ純愛

アルバム「MUSIC」収録。作詞作曲志村正彦。ホシデサルトパレードでは総君(と呼びたい風貌ですね、この時は実に)が歌いました。ドラムが入っていないのは志村が「あえて抜いた」と話していたから(アルバム「MUSIC」ライナーノーツ)。アコースティックギターとコーラスで聴かせる一曲。

 

MUSIC

MUSIC

 

 

衝撃のラストを観ると、最初に戻ってもう一度確かめたくなる映画ってあるじゃないですか。「シックス・センス」とか「 LA Confidential」とか。この曲もそう。

 

心機一転 何もかも春は

転んで起き上がる

街に舞い散った花びら

踏みつぶして歩く

 

花びらを踏みつぶして歩くシーンから物語は始まる。

 

君をみつけて 君と二人

遊び半分で 君を通せんぼ

いつになったって 雨は止むもの

遠くに行けるから 大丈夫

 

じゃれあう二人。微笑ましい恋人同士。

彼女を連れ出そうとする彼。

 

うだるような季節の夏は

サンダルで駆け巡る

駄菓子屋で買った りんご飴

大きくて食べきれない

 

食べきれないのは彼女かな?

 

君を見つけて 君と二人

遊び半分で 君を通せんぼ

雨が止んだら 虹が出るから

晴れた気分で街を歩くよ

 

晴れた気分?晴れてるのではなくて?

雨は、本当はまだ止んでいないのか。

 

枯れ葉が舞い散ってる秋は

君が恋しくなる

記憶の中にいる君は

いつだって笑顔だけ

 

ここまで聴いて、やっと気づくのだ。

彼女はもういないのだと。

これは現在進行形のラブソングではなくて、今はもういない誰かを想って歌っているのだ。「何もかも」「心機一転」しようとしたのは、彼女との別れから立ち上がりたいから。それでも、下を向いて、花びらをひたすら踏み潰して、歩いてしまう。

いつかこの雨も止むから、虹がかかるはずだから、大丈夫だとつぶやきながら。

 

それでも、思い出すのは、彼女と出会い、恋をし、一緒に過ごした日々のこと。

いや、もしかしたら、それもすべて妄想かもしれない。

本当は彼の片思いで、彼は彼女を遠くから見つめていただけなのかもしれない。

 

君を見つけて 君と二人

遊び半分で 君を通せんぼ

冬になったって 雪がやんじゃえば

澄んだ空気が僕を 包み込む

 

そう、彼女はやはりここにはいない。

僕はひとり、澄んだ空気に包みこまれている。

 そしてやがてまた、春が来る。