「自分が過去に好きになった人の影響が自分のなかで生き続けているということを考えながら歌詞を書きました。」(アルバム「LIFE」ライナーノーツ)という、アルバム「LIFE」の中の一曲。作詞作曲は山内総一郎。
桜は寂しくなっちゃうから嫌いだなんて
強い口調で言うから僕もそう思ってたっけな
桜が嫌いだというその人が誰なのか、特定はされていないけれどしかしファンとしては、いかにも志村の言いそうなことだよねと思うに決まっている。
バンドの中で志村と近い位置にいたのは多分金澤ダイスケで、山内総一郎は、一時期はむしろ志村からは「過剰なライバル心みたいなの」を持たれていたという(「音楽と人」2012年6月号)。その頃のフジファブリックは、メンバー間で今より会話も少なかったというし(音で会話する?)、わかりやすい「友情」といったものはイメージにあまり合致しない。
北海道くらい寒いらしい予報の通り
まだ雪が残る木々の脇を並んで走った
メジャーデビューを果たしてからの最初の5年間、同じバンドの一員として並走した、というのが一番しっくりくるかもしれない。新しい環境の中で、影響を与えられ、与え合い、それは濃い5年間だったのだろう。
隣に深く、深く自分自身を歌う人がいて、そこに心を添わせてギターを合わせるのはどんな日々だったのか。
何一つ同じじゃないはずなのに
街の色はあの頃のようで
僕ら見ていた景色が
近く まだ近くに感じます
「未だ気持ちの整理はつきません」(2014年12月27日の「総言うわけで」)という言葉のとおり、メンバーにはまだ、志村が居た時の景色が近くに見えているのかもしれない。
嬉しいときも悲しいときもいつも決まって
先に涙見せるから僕はいつも我慢してた
隣にいる人に先に泣かれてしまうと、こっちは泣けなくなる。そんなことを思い出して、でも今もうその人はいなくて。
何回も寒い冬が過ぎ 思い出しては
嚙み締めることだけで僕はまだ何も変われないんだ
外からすると、あの出来事以来の山内総一郎をはじめメンバーの変わりようは物凄いものがあるけれども、彼ら自身にすれば、昔に立ち戻る瞬間が多々あって、思い出しては、嚙み締めているのかな。
深く想われているんだね、志村君。