彼方の音楽

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SMAP解散に与えられた物語

キャンディーズは、日比谷野外音楽堂でのコンサートのエンディングで、「私たち、皆さんに、謝らなければならない事があります」、「私たち、今度の9月で解散します」と解散宣言をした。

 

ビートルズは、会議の席上でジョンがポールに「“契約書にサインするまでは黙ってろ”と言われたんだけど、君がそう言うんなら教えてやるよ。俺はもうビートルズを辞めることにした」と吐き捨てて、解散に至った。

 

人々から愛された、沢山のバンドやグループが解散してきた。永遠の愛を誓い合った恋人にも別れが訪れるように、共に夢を追いかけてきたグループが解散することになってしまうのは、決して珍しいことではない。いや、むしろ、解散しないほうが、稀なのだろう。だから、人々の記憶に残るのは、解散したかどうかという結末ではなく、解散にあたってのストーリー、物語である。

 

その物語は、真実の場合もあれば、創られたものであることもある。人によってモノの見え方は違うから、見る人の数だけ真実があるともいえるかもしれない。愛憎にまみれた真実か、創られた美しい物語か。いずれにせよ、アイドルには、背負った視線の大きさにみあった花道が用意されるものである。

 

今、日本で一番知名度のあるアイドルグループである、SMAPの場合はどうだろうか。ジャニーズ事務所の広報部であるらしいスポニチの見出しを並べると、こうだ。

 

www.sponichi.co.jp

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ジャニーズ事務所が与えようとしている物語は、つまりはメンバー間の内紛ということのようである。これ以上、見出しを並べることはしないが、部活内でのいじめが原因だったんですよみたいな、底の浅い物語が用意されている。

 

しかし、あまりにも筋書きが雑すぎる。そのため、少なくともファンは納得はしていないようで、次に出てきた物語は、「ジャニーズ事務所の創業者一族にとって不都合な存在だったSMAPが冷遇され、潰されようとしている」というものである。

 

興業には闇がつきものだ。舞台の上では自由な彼らも、ステージを降りれば様々なしがらみ、利権、人間関係でがんじがらめだ。1月には、何をどう判断したのかジャニーズ事務所が舞台裏をそのまま生放送で披露したので、このもうひとつの物語は信憑性をもって受け止められている。

 

いずれにせよ、多くのファンに夢を与え、心の支えとなってきたアイドルグループには、花道など全く用意されておらず、ゴルゴダの丘へ続く坂道か、はたまたあだしが原の道行か、彼らは今しばらく毀誉褒貶の降り注ぐ中を歩いて行かざるを得ないようである。

当人たちの心中は慮ることさえ難しいが、ファンとしては胸が引きちぎられる思いだろうし、日本の芸能史にとっても決して美しい話ではない。

 

物語の行く末は、まだ見えない。